乾燥肌をめぐる冒険 面識のある方はご存知だろうけど、僕は年がら年じゅう褐色のいわゆる元気そうな肌の色をしてる。真夏に離島にいけば「おつかれさまでーす」なんて言われて現地の人にすっかり同化してしまう。 すっかり強い肌の持ち主たる自負が全身を巡ってたから、長じてから乾燥肌になった時には拍子抜けした。冬になると、どうにも脚が乾燥するのです。 かゆい。かゆい。不快。 痒さの前に江戸っ子の臆面もなにもない。この十数年間、冬になると様々な製品を試した。なんとかクリームからなんとかシアバター、医薬品ぽいものからオーガニックなものまで。国内はもちろん、アメリカ出張のたびにWholefoodsでいろいろ購入して試してきた。ちなみにシアバターはこの十数年ほどで、ボディショップのヒットあたりからはじまり、ついに最近では高級ティッシュに配合されるまでになった。おお、シアバターさん、ずいぶんなところまで来ましたね、なんて苦労を偲んだりして。我が机に鎮座してる。ちょっと舐めてみたら、なるほど甘かった。 よく効くものを求め続けてきたのだけど、デンマークでこんな話をきいて目先を変えてみた。 「強すぎるリップクリームは唇をより荒らす。」 おお、なんか怖い。 人口の多くない社会民主主義国のデンマークではドラッグストアは数種類のチェーンしかないし、商品の選択肢も消費大国の日本やアメリカと比べるとずいぶん少ない。リップクリームで言えばほとんどはそこそこの値段で買えるグローバルブランドのもの。たまに値のはるオーガニックなものもある。まあ選択肢はすくない。 それで乾燥肌に対するプリンシプルを変えてみた。 すごくよく効くものを求めない。 のんびり無印良品のお店を漂ってるとき(至福の時間)にそんなことを考えつつ、大きな乳液のボトルを手にとった。おそらく諸兄もそうだと思うけども乳液がなんたるか、知識がなかった。なんだか保湿のためにあるのだろう、くらいの知見で手をだしたこともなかった。なんとかバターよりも多い量で半分くらいの額面。たしか銀杏の木も黄色く色づきはじめてもいない頃、我が乾燥肌も穏やかであったからこれを試してみた。 一騎当千。 なんとかクリームと違って油がきれることなく、痒くなる時間がやってこない。 塗りごこちも伸びやかで快適。今年の冬はずいぶん寒いけども、わが乾燥肌も穏やかな面持ちだ。 これで冒険が終わるとは限らない。急変は乾燥肌の常。文字通り油断せずに厳冬に挑む所存だ。