ネーミングのはなし① 名は体を変える

歩いてるとき、銭湯にいるとき、ときには居酒屋のカウンター。仕事のうちの大きな部分をネーミングの仕事がしめている。ブランディングやデザインの仕事のなかでも、特に好きな仕事だ。どうしてたのしいのか。今日からいくつかのネーミングについてのストーリーを綴ってみます。

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後輩に東北出身のおとなしい男子がいた。Kくん。東北男子のステレオタイプを地でいく朴訥とした彼。どうしたらみんなと楽しくできるだろうか。

ニックネームだ。

学生生活においてニックネームとは、魔物である。

良薬にもなるし、致命傷ともなる。慎重さと、フレンドリーさの両立が大切だ。

K君の本名から無段変格して、チャーリーと名付けた。陽気に、たのしく過ごしてほしかった。

やはりニックネームの魔法はあるのだ。数年後、彼と僕はサンフランシスコの丘の上からゴールデンゲートブリッジを眺めていた。留学してすっかりアメリカンになった彼は、当時僕にとって馴染みのなかった西海岸の風を、突風に凝縮してあててくれた。その後のアメリカでの仕事もなんだか怖くなかったのは案外この彼のお陰かもしれないし、そんなこともないかもしれない。しかし今でもアメリカで、ボロボロの故障しそうな誰かのセダンに乗るたび、その頃の彼のことを思い出す。

それから随分いろんな人にニックネームをつけたきた。

BAUMにやってくるインターンの子たちには新しいニックネームをつけてる。世界のあちこちからやってくる彼ら彼女ら。数ヶ月の間くらい、普段の自分からちょっと変わって、別の人になったつもりになってみても、わるいことはない。それはチャーリーが教えてくれたのだし、「名は体を変える」とは彼からの教訓なのだ。