マンチェスター発、イノベーティブな紅茶 はじめまして、インターンのちゃっきーです。 10月も半ばにさしかかり、やっと秋らしくなってきた今日この頃。 キンキンに冷えたビールよりも、温かい飲み物でほっと一息したくなる涼しさになりました。 飲み物と言えば、 みなさんはカフェの紅茶が可哀想だと思うことってありませんか? 私はいつも、メニューの右下あたりに追いやられたTea (hot / ice)の文字を見て、もう少し存在感出してやれえ…と思いながらコーヒーを注文します。 とはいえ、かの紅茶大国イギリスでさえ、今や「紅茶より珈琲を好む」という人が61%を占めているというのだから。紅茶がカフェの看板メニューに躍り出るのは簡単ではなさそうです。 そもそもイギリスで紅茶が飲まれるのって、硬水や乳製品との相性が良いからだそうで、もともとは高級な飲み物でした。 一般庶民の間に普及した現代でもそのイメージは残っているのかも知れません。 私たち日本人にとっても、紅茶ってどこかお上品なイメージがあります。 「わたくしお紅茶でございますのよ」みたいなまろやかな色と味。ティーカップに淹れて飲んでやらないと紅茶に文句を言われそうな気がするんです。 日本でおなじみの「午後の紅茶」だって、「朝、目覚めの紅茶」や「夕方の紅茶」だとなんとも違和感。「紅茶」を傍らに優雅に過ごす「午後」だから雰囲気があるのです。 一方で、コーヒーなら「朝のコーヒー」でも「午後のコーヒー」でも自然と馴染む。どれだけこだわって作られたものでも気軽に手に取れるのです、不思議なことに。 私にはコーヒーぐらいのカジュアルさで十分、とついコーヒーを選んでしまいます。 しかし、このような紅茶のイメージをうち破り、私のようなカジュアル志向の現代人に合う形で良い紅茶を届けようと奮闘する紅茶ブランドがイギリス、マンチェスターにありました。 今回は、そんな手軽さと質の良さの両立を目指し「より良い紅茶」を追求する紅茶ブランド、BREW TEA Coについてブランディングのお話をします。 tea timeではなくbrew teaを BREW TEA Co 「ティー そのものは勿論、 ティー を味わうひと時 – 大切な人と過ごす時間だったり 自分へのご褒美の時間だったり、そんな幸福なひと時を大切にしたい」という理念のもと、紅茶や関連製品の生産販売を行っている紅茶ブランドだ。 これまで、紅茶市場は「質より量」重視で安く手軽な紅茶を販売するブランドと、「量より質」重視でこだわりのブレンドティーなどを展開する高級路線のブランドとに二分されていた。 そこで、BREW TEA Coはあえて両者の中間にブランドとしてのオリジナリティを見出したそうだ。 出典:BREW TEA Co blog 多くのブランドがCTC*と呼ばれる製法を用いる中、BREW TEAでは長い年月をかけてテストとブレンドを繰り返し、茶葉をカットせずティーバッグに入れた状態で手軽さと美味しさのバランスを実現する製法を編み出した。 * Crush、Tear、Curl の略で、短時間で茶成分の抽出が出来るよう最初から細かい茶葉を作る製法 そんなBREW TEA Coの紅茶を飲むひと時は、珈琲を飲む時のように都会的な時間の流れととても相性が良い。 改まってティータイムをとらなくても、質の良い紅茶を片手に仲間や大切な人との会話が弾む。 BREW TEA Coはカジュアルさとロイヤリティを兼ね備えた紅茶の新しい立ち位置を提示しているのだ。 出典: BREW STORY ユニセックスなグラフィック、社会問題への配慮、より現代的な紅茶 BREW TEA Coというと、ひときわ目を引くのがそのパッケージとプリントワークだ。 単色の背景にシンプルな太字。ユニセックスな印象を持ってもらうため、いくつかあった原案の中からこのデザインに決まったという。 確かにこれが従来の紅茶のイメージそのままのデコラティブでフェミニンなデザインだったらとりあえず紅茶でも…とはならないだろう。 イギリスのロイヤルなティールームを飛び出して、人の行き交うニューヨークの雑踏にも溶け込むようなポップなデザインは、まさにBREW TEA Coらしさと言える。 ティーバッグはコーンスターチを使ったSOILONという素材で作られており、使用後は土に還すことができるそう。 他にもNatureFlexと呼ばれる木製パルプから作られた素材を使用しプラスティックパッケージ廃止を推進、生産面ではフェアトレードなどにも注力していて、これらの活動から英国のCertified B Corporation* に選出されている。 *{ビジネスの力を利用して社会問題の解決を目指す新しいタイプの企業=governance, community, workers and environmentの4点からなる} BREW TEAの作る、時代に寄り添う「より良い紅茶」は飲み手はもちろん、環境や生産者ともしっかりと向き合っているのだ。 出典: BREW TEA Co blog BREW TEA Coのブランディング こだわりのある製品、お洒落なデザイン、社会貢献運動。 企業のアクションとしては今や当たり前となりつつあるこれらに、ストーリー性を加えることで説得力を持たせ、私たち消費者の共感を誘うBREW TEA Co。 彼らはブログで、”It’s about looking at tea differently, changing your attitude, not changing your brand.” と話している。 ブランディングを通して新しい風を吹き込む時、なにもブランドの歴史や伝統を捨て去ってしまう必要はない。 そもそも「ブランド」とはその企業の製品やサービスを同業他社のそれと区別させる要素、いわばアイデンティティだ。世の中の流れに遅れないように、新しいものを取り入れよう!と「らしくない」ことをしては本末転倒。 では、BREW TEA Coはいったいどのようなブランディングを行って、伝統と革新を両立させたのか。 ブランディングを行うにあたって、必ず言われるのがターゲットの明確化だが、 中でもBREW TEA Coは従来の紅茶ブランドとの相違点、カフェでの紅茶の扱われ方など、競合相手の明確化を徹底し、市場での、社会での、自分たちのポジションを明らかにすることで現代社会における新しい紅茶の道を切り拓くことに成功した。 また、ジェンダーと消費の関係性、環境問題、労働問題など現代的な価値観や社会問題にアプローチすることで、伝統的な紅茶のあり方を刷新したのだ。 出典: BREW STORY ミッションとアクションの合理性を問うことで効果的なアクションを起こすことができる。逆に、実践したアクションの影響をフィードバックすることで、ミッションを再確認することができる。 新たな取り組みを進めていく上で、理念やアイデンティティといった「ミッション」と 消費者との接点となる「アクション」の結びつきを強める架け橋となるのがブランディングなのだ。 彼らは「より良い紅茶を目指す試みに終わりはない」と言う。 より良い紅茶への飽くなき「探求心」、その堅い意志を支える「柔軟な姿勢」。イノベーションに必須の要素が彼らのブランディングにはある。 紅茶業界のイノベーター、BREW TEA Coの事例から学べるブランディングは「より良いもの」を探し求める全ての人にヒントを与えてくれる。 みなさんも、BREW TEA Coの紅茶を片手に新たな可能性を見つける旅へ出てみてはいかがだろう。 参考: EVERYONE KNOWS THAT YOU CAN’T CHARGE MORE FOR TEA,RIGHT?, BREW TEA Co BREW STORY Tea for Two? An Interview with tea champions Brew Tea