ハンドルを握った瞬間から

「ハンドルを握った瞬間から保険が適用されます」
車の保険の切り替え手続きをしたときに気になった一節。
それまで事務的にスラスラ対応していた電話口の方が、こんな小粋な言い回しを急にするもんだから、よく覚えてる。
たしかに言い得て妙というか、いつから保険が適用されているのかは大切だからわかりやすい表現だ。台本をつくるときに工夫されたところなのかもしれない。
なぜハンドルなのだろう。

車の始動の挙動は他にも色々ある。
「イグニッションを回した瞬間から」―電話口ではキザすぎる

「バックミラーに手をかけたときから」―わからなくもないけどぎこちない

「ドアをしめたときから」―これもぎこちない

「シフトレバーを握ったときから」―ラジオCMっぽい情感はあるけども

「エギゾーストサウンドを響かせた瞬間から」―ラジオCMではこういう表現多いですね
いろいろ巡ってみてもやっぱりハンドルが一番しっくりくるようだ。
クルマのまわりの用語はカタカナばかりだし、ハンドルとステアリングのように英語的に正しいのも正しくないのも混在して使われる。使い方によって、キザに聞こえたり、情感がふくらんだりする。ラジオCMを聴いてると外国車はずいぶんテンションの高い言葉が並ぶ。「〜〜が息づく」「エクステリア」「〜プレミアム」からの「シンプルで上質な人生を愉しむあなたに」。高級マンションのマンションポエムもそうだけど、こういうのはその道を思いっきり突っ走ってくれたほうが耳心地がよい。アクセル全開でね。