バッテリー 数週間ぶりにクルマのエンジンをかけようとすると、うんともすんとも言わない。正確にはウィーンともブルンとも言わない。おお、これはまさか。 都会育ちの困ったところはこういう修理ごとに馴染みがない。農家さんなんて何でも自分たちで直してしまう。耕運機に軽トラ、たしかにエンジンもの多いですからね。 検索してみると、どうやらバッテリーかスターターが壊れているそう。 バッテリー。交換方法を調べてみると、火花、爆発、硫酸などおおよそおっかない単語が並んでる。でもどうやら自分で交換できるもののようなのでインターネットで注文した。こんなものまで売ってるのかAmazon。型番適合チェッカーなんて便利機能まで。 先日農家のおやじさんと呑んでるときにこんな話がでた。 「ちょっと前まで本屋かと思ってたらさあ、もうなんでも売ってんだもんね」 「あの物流力はすんげえよ、どうなってんのかね」 農家さんって毎日収穫して発送してたりするから、実感があるのだと思う。 届いたバッテリーは想像よりも随分重かった。 あまり傾けると中の危険な液がこぼれて服なんかは溶けてしまうそう。ヤマト運輸さん、すみません。ありがとうございます。 入手してみればウズウズが止まらず、さっそく交換にとりかかった。 夜8時。キャンプ用のランタンを灯して、注意しながら慎重にネジを外していく。マイナス側から外さないと危険らしいです。 愛車は随分古いので、ネットで見たよりもずいぶん入り組んだ線だった。 交換していると、通りがかりの同じ駐車場の皆さんが声をかけてくれる。 「おいおい、壊れちゃったのかい」 「バッテリーってどこで売ってるの?」 古いマンションだから年配の方が多い。 思いがけずあったかい交流ができた。「修理する」っていうのはちょっとした非日常だから、会話のきっかけとしてちょうどよかったんですね。場もある。 配線をつなぐと、ヘッドライトが「おはよう」とでも言うように優しく光った。