SHIBUYA CAST.

創造力と 遊ぶ/働く/住む

Client: 東急株式会社
Date: 2016
Services: Branding, Concept,Graphic Design,Art Direction,COPYWRITING,Direction

渋谷からSHIBUYAに変わるなかで

100年に一度と言われる渋谷駅周辺の再開発。2012年の渋谷ヒカリエ開業を皮切りに、2023年までに9つの再開発プロジェクトが動いています。

渋谷の街は、渋谷駅周辺だけでなく、原宿、表参道、青山、代官山、恵比寿といった個性豊かな街が点在しており、これらを含めたエリアを「広域渋谷」とし、「点(街)」から「面(エリア)」へと回遊性を高めるような開発を進め、各地域の魅力をつなげています。

商と住

再開発プロジェクトの一つである渋谷キャストは、東京都が主催する「都市再生ステップアップ・プロジェクト」における、渋谷区の都営住宅「宮下町アパート」の跡地事業。渋谷、青山、原宿の中心であり、キャットストリートの入り口に位置し、多くの人の流れがある場所です。

表の通りにはファッション、デザイン系のショップが多く集まっている一方で、一本奥に入ると住宅地が広がっており、商と住が近いエリア。

さまざまなカルチャーと暮らしが行き交うこの土地の特性を活かし、渋谷キャストは人々のクリエイティビティを誘発する場を目指して誕生しました。店舗、オフィス、シェアオフィス、賃貸住宅といった多様な機能を兼ね揃えた複合施設として、クリエイティブ活動の拠点となります。

リブシブ賞

渋谷キャストの建築は「Echoes of Uniqueness[エコーズ オブ ユニークネス]/不揃いの調和」をコンセプトに、カラー・マテリアル、ファサード、広場、各フロアに渡って、さまざまな建築家がキャスティングされ、多種多様な個性を融合させながら設計が進んでいきました。

その中で、クリエイター同士が共に暮らし、交流を生むことを目指したのが、賃貸住宅の一部である13階コレクティブハウス。その賃貸住宅をどう活用するのか、コンペティション形式で未来の居住者たりうる人々のアイデアを募りました。

渋谷を舞台に、新しい住まい・住まい方を考えるというコンセプトの新奇性が伝わるよう、「リブシブ賞(LIVE IN SHIBUYA AWARD)」というネーミングと「住む渋谷をデザイン」というコピーを制作。

また、「渋」の字をテキスタイル化して仮囲い、フライヤー、WEBなどに展開することで、プロジェクトの世界観を体現するアイコンとして定着させました。

greenz.jp記事 -「リブシブ賞」座談会

工事中のコミュニケーション

開業までの間には、街の人に向けたコミュニケーションが必要となっていきます。街の新しい場として、どんな人たちのための場ができるのか。ティザーの段階では、すべては語らず、最低限の情報で想像力を刺激する広告を展開しました。

イラストレーションを担当したのはオレゴン州ポートランドのインディーズアーティスト。プロジェクトのコアメンバーが本プロジェクトの初期にクリエイティブクラスのワークスタイル、ライフスタイルの視察やディスカッションのために現地に滞在した縁から起用しました。

男女のポートレートは、日本人のクリエイターをイメージして描いてもらい、海外アーティストの視点で描かれたそれは、「クリエイター」という曖昧な共通イメージの補助線となるビジュアルに。インパクトのある大きなイラストが渋谷の街や電車の中吊りを飾りました。

その後も、toB、toC向けに施設の本質が伝わるよう対象とフェーズに合わせてコミュニケーションを継続して行っていきました。

2017年4月の開業時には、未来の渋谷キャストの姿を描いたビジュアルと、「WORK LIVE PLAY -創造力と 遊ぶ/働く/住む-」というタグラインを作成し、施設のアイデンティティを明確にし、街に広く伝えていきました。
このビジュアルとタグラインは、施設の目指すべき姿として、いまも施設内にオブジェとして飾られています。

ビルの内外のことをパブリックアベイラブルにするオウンドメディア

公式WEBサイトは、全体構成・デザイン・運営を担当。渋谷キャストの情報発信源となるジャーナルページを設け、記事コンテンツも作成しています。

記事コンテンツは、開業1ヶ月前から渋谷キャストへの理解を深め、期待感を持ってもらうことを目指して展開。開業前には、再開発に注目集まる中で地理的背景に迫った記事や、現場担当者が語る施設の裏話など、クリエイター層にも発見があり、馴染みのない方にも興味を持って読まれるような記事づくりを行いました。
また、撮影は、写真家・池田晶紀さんが主催する写真事務所・ゆかいに依頼し、著名な作家が関わっていることでクリエイター層への関心を高められるよう構成。

このジャーナル記事は開業後も施設で起きていることを日々とらえながら、企画を考え発信を続けています。

WEBの他にもSNS運営も担当し、媒体を分けながら経常的な発信を行っています。この場所にはどういった人が集まり、何をしているのか。普段は知るのことのできない建物の内面を、人を通して伝えるコンテンツを展開しています。

入居クリエイター、近隣ワーカー、地域住民、来訪者など、あらゆる人が行き交う施設の特性も伝えられるよう、それぞれの人に応じて企画と媒体を工夫し、幅広く、深く紹介しています。

 

タクティカルアーバニズムとしてのこたつと映画

渋谷キャストでは「街の結節点」となる場所を目指し、地域とのつながりを深める取り組みとして館主催のイベントを数多く開催しています。特に毎年クリスマス時期に開催される冬季イベントは、他施設ではマーケティングの一環としたものが多い中で、地域とのつながりや温かみが感じられる場をつくっています。

2019年の開催では企画運営を担当し、働き、住み、遊ぶ人などあらゆる目的を持って集まる場所で、それぞれが同じ時間を共有する豊かさを感じられる空間を目指しました。

企画の背景には、渋谷キャスト周辺は住宅や学校も集まっており、施設内のスーパーへ食材を買い物に来たり、学校帰りにベンチで話したりと生活圏として日々訪れている人が多くいることに着目。

そうした背景のもと、例えば、スーパーに牛乳を買いに来たおじいさんが「今日はちょっといい1日だったな」と感じられるように、誰もが好奇心を持って、気軽に楽しめる加減を検討。コンセプトは「MARKET PLAYCE」とし、PLACEという言葉に「PLAY=遊ぶ」を掛けて、マーケットを中心にふらっと遊んだり、ゆるく時間を過ごすことができる体験をつくりました。

街ゆく人同士がゆるく場の共有を感じられる体験には、約20mの長大な「シェアードこたつ」と屋外シアターを展開。

シェアードこたつは、約20mという長さで広場の入口から大階段までの通りを圧倒するという違和感と不思議さと同時に、こたつという直感性によって、街ゆく人が好奇心を持ちつつ参加しやすい設計に。初対面の人と同じテーブルを共にするという少しの緊張感を、くつろぎに変えました。

屋外シアターでは、多くの人と場を共にする楽しさに、より一体感を持たせるものとして実施しました。合わせて、極小のポップコーン小屋を制作し、映画を観る前にポップコーンを配布。冬の寒い屋外ながらも、映画館に入るような非日常感を演出。

映画上映に合わせてレイアウトも変更し、こたつに入って観れるようにすることで、より一体感が生まれ、たくさんの人がお茶の間を囲むように映画のひとときを楽しんでいました。

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