HOTEL NUPKA 街をつくるホテル

アーバンロッジ

Client: HOTEL & CAFE NUPKA
Website: nupka.jp
Date: 2015
Services: Concept

帯広市は北海道東部、食料自給率1100%を誇る雄大な十勝平野の中心都市。

かつては中心市街は高度経済成長期には道内有数のにぎわいを見せる街でした。

北海道独特の自動車前提の暮らしや郊外のショッピングモール開発などもあいまって、他の多くの地方都市と同様に活性化施策の対象になるような状況に。

ポートランドでの街づくり学校に参加していた弁護士の柏尾哲哉さんは帯広の中心市街で生まれ育ち、いつかはまたあの頃の賑わいを街に取り戻したいと考えていたそう。市民が自ら小商いを生み出し、街の魅力を作り上げていくポートランドの住民が主役の街づくりに感銘を受けた柏尾さんは、売りに出ていたホテルを購入する計画をすすめることになりました。

ポートランドの街づくりを日本にはじめて紹介した「Green Neighborhood」の著者であるアーキネティクスの吹田良平さんとBAUMでチームを組んで街に貢献するホテル計画を練りました。フィールドワークを重ねて、つくったビジョンが「Hotel Urbanism=街をつくるホテル」。

フィールドワークで見えてきたことは、中心市街地にはユニークな観光資源はあるものの、それを面白がる層があまり来ていない。近隣都市の釧路には湿原をめがけて多くの人が訪れるものの、複数都市をめぐるような旅の仕方は根付いていない。ニセコや札幌が北海道の知名度を大きく上げたため、アジア圏を中心に雪のない国の人たちには大きな魅力となっている。そして十勝平野のエクスペリエンスにはポテンシャルがある。

この街を面白がるような人たちがこのホテルをめがけてくるようになれば、変化が生まれてくるはず。着目したのはバックパッカーやアウトドアアクティビティの愛好者です。バックパッカーは観光体験はもちろんですが、常に探しているのは面白い出会いのある安い宿。アウトドアアクティビティ愛好者は、滞在体験のプライオリティは低いためコストパフォーマンスのよい宿を求めていますが、ビジネスホテルで寝るだけというのは寂しいと感じている。

ホテル自体はもともと短期滞在の労働者向けで、構造も小さな部屋を前提としていました。部屋は小さくともクリーンに。そして、路面に面した1F部分は街と旅人の接点に。計画の早い段階でこんなスケッチを書きました。

帯広の街では路面に面した店舗がおしなべて内部が見えないようになっていました。ガラスをつかって大きな開口部になっていたも宣伝ポスター等で埋まってしまっている。街に人影の少ない大きな原因はここにあります。今でこそ全米有数の「歩ける街(High Walkablity City)」となったオレゴン州ポートランドでもかつては似たような状況があったのです。路面には積極的に店舗を入れ、中にいる人影を感じられるようにすることで、雨季の長い街であっても人の存在を感じられる日常生活を可能にしたのです。

ホテルの1Fの計画でもその点を重視し、カフェやBarをフロントと一体に設置、ロビー兼イベントスペースで頻繁に何かしらのイベントが開催されることで旅人と地元の人の接点をつくり、街の人にとって常に「気になる場所」にすることを目指しました。

ビジョンに基づいて掲げたコンセプトは「Urban Lodge(街の山小屋)」。山小屋のように自然体験についての最新の情報が集まり、独自企画のアクティビティにも参加できる場所。十勝平野での特別な体験こそが大きなマグネット。他のどこにもない特別な体験を求める人が集い、夜は味わい深い中心市街地の飲食店の面白さを掘り起こす滞在スタイルを実現する。

開業から数年。いまこのホテルのロビーには朝は、釣り人やハイカーが共に食卓を囲んでいます。アウトドアギアの展示会が行われ、音楽について学び定期講座も開催。近隣の店舗との連携も進み、少しずつ確実に人の流れが変わってきています。

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