びんからのぞく技術と仕事観

はじめまして、インターンのなーやんです。

今回は9月20日に行われた、「飲み会とトークイベントの中間」をコンセプトに、月一度開催しているBARイベント「BAR UM」の様子をお届けします。

ガラスびんってなんだか特別な感じがしますよね。

びん詰めのお菓子や、ガラスびんの飲み物が出てくると、中身は同じなのに、なぜかワクワクしませんか?小さい頃、使い終えたガラスびんにアクリルの宝石をしまって、眺めていたことを思い出します。

そんな不思議な魅力を持つビンについて、「大川硝子工業所」の5代目社長 大川岳伸さんにお話ししていただきました。


創業100年以上の歴史を持つガラスびんメーカーで、さまざまな製品開発やデザイン・加工などを行っている大川さん。
普段あまり触れる機会が多くないガラスびん製造・加工の裏側や、ご自身の仕事観まで、たくさんの熱いお話を伺うことができました。

大川硝子工業所で加工・販売しているガラスびんを沢山持ってきてくださった大川さん。

お菓子の容器やグラスとして皆さんに使っていただきました。


駄菓子屋のボトルに着想を得て作られた「地球びん」。実際に駄菓子を入れて楽しみました。
「kaobin」というガラスびんを使った子供用のドリンキングジャー。

はじめに、ガラスびんの作り方や加工について教えていただきました。

まず、溶けたガラスが入っている「るつぼ」と呼ばれる容器から、ガラスの塊を取り出します。
次に、その塊を型に入れるためにまず大まかな形に整え、最後に型に入れ形を作ります。

一見、型に入れる作業が難しく感じられますが、実はるつぼから塊を取り出す方が熟練の職人さんの仕事。ガラスの塊を取り出す際には、適切な量を判断して取り出さなくてはならないため、数十年もの経験が必要になるそうです。

溶けたガラスが出てくるのをみて歓声をあげたり、失敗したガラスびんをあっさり割ってしまう映像をみてびっくりしたりと、皆さん初めて見るガラスびん作りの場面に興味津々でした。

ガラスびんの底にも秘密がありました。

底側に、数字やアルファベットが書かれているガラスびんを見たことはありますか?
ここには、製造した会社の名前や金型の番号などが書かれています。
そしてこれは、不良品が出てしまった時にどの金型で不具合が起きているのかを判別するためにつけられています。


「地球びん」の底。大川硝子工業所のロゴマークが書かれています。

 

そのほかにも、ガラスびんならではの印刷方法や、インクの種類、金型の話などをしていただき、日頃何気なく手に取っているガラスびんにはたくさんの技術がつめ込まれているのを目の当たりにしました。

新たなガラスびんの使い方を提案したり、ホームページやSNSで商品や取り組みについて発信したりと、常に新しい発想でチャレンジを続けている大川さん。その各製品の裏話やこだわりなども伺うことができました。

その中でも特に印象に残ったお話は「新しい価値観を取り入れる」ということ。

例えばこの「地球びん」は、元々は大川さんのおじいさまが作られたもの。

その「地球びん」のパッケージをリニューアルする際、キャップ部分に使っていた色を使ってデザインしたものの「レトロすぎて古く感じられるのでは」、と思ったそうです。
しかし学生に意見を聞いたところ、レトロというよりむしろ「新鮮でかわいい」と言われ、自分の持つ固定観念にとらわれていたことに気が付いたのだとか。

こうして、昔からの良さは残しつつ、現在でも良いと思ってもらえるようなデザインを作ることができたとおっしゃっていました。

「新しい可能性にも賭ける。失敗しても、自分でなんとかしていく。」

その言葉がとても印象に残っています。
このような大川さんの価値観が、時代とマッチした様々な発想を生み出してきたのだと実感しました。


「地球びん」の以前のパッケージ。

また、「いいものを適正な価格で売る」ことを目指しているとのこと。

現在、嗜好の変化や景気の変動などにより、ガラスびんの売り上げは伸び悩んでいるそう。今後の業界にとっては、質のいいガラスびんを適正な価格で売ることが大切だと大川さんは考えています。
質の高い商品を沢山の人に届けるためにも、新しい発想で製品を作ったり、パッケージ等のデザインを工夫したりしているそうです。

新しい発想を取り入れつつ、古くからある良いものは活かして、その価値をさらに高めていく。このサイクルが、時代の移り変わりとともに素敵な製品を生み出しているのではないかと感じました。

終始質問が飛びかい、あっという間に時間が過ぎた今回のBAR UM。
ガラスびんの製造・加工のお話から、大川さんの仕事観まで、深く伺うことができました。

■次回のBAR UMは10月18日を予定しています。
今月のテーマは「『生きるように働く』が生まれるまで」。
バウムが装丁を担当した『生きるように働く』(ミシマ社)の著者 ナカムラケンタさん、その担当編集者であるミシマ社の星野友里さんをお招きします。
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