2024.12

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12月に入るとヨーロッパの空港も年末の空気に包まれる。コペンハーゲンから東京に向かう経由地のフランクフルト空港。多様な文化背景をもつ人の姿が渦をまく。

今年顕著になったのは、広告物のビジュアルに生成AIによるものが多くなったこと。特に予算の限られるような店頭まわりにみられる。これはデンマークにはない兆候で、ドイツにはある。キャッチコピーもビジュアルもAIが平均的で論理的に正しいようなものを出せるのだから合理的ではある。

他方で、この空港は新聞や雑誌の無料配布ラックがある。前時代を彷彿とさせるが、人気がある。ニューヨークタイムズ片手に搭乗する。20世紀に憧れた姿。ラックの片隅にMonocleの女性版Konfektがあった。編集者のSophie Groveは”The art of hosting”と題した序文にこんなことを書いてる。

“冬のおもてなしには(中略)他者に心を開きたいという真摯な願いが必要です。”

”心を開きたいという願い”。
ーとてもいい。

すこし前にターミナル駅のリサーチをしていた。見えてきたことは、都市の密度が高い公共空間では、ヒトは感情の感度をオフにしようとすること。たしかに森の中や海辺と都会の喧騒ではさまざまなセンサーがまったく違う状態にある。人の密度に応じて自動的にそうなるかといえばそうでもなく、例えばデパ地下なんかでは、ある感度だけがぐんと上がりつつ、ストレスを感じるセンサーは切っていたりする。

他者に対して心を開きたい、という願い。
冬至に向かう北欧では、隣人愛的な場面を見ることがある。まいにち暗く、寒くなり続ける中で明るさや暖かさを求める。気心の知れた人以外にも心を開く。
分け合うことでよりあたたかくなる。
そういう感覚がある。

生成AIによる広告物にぞわっとし、新聞雑誌ラックにほっとするのは、そういうヒトの心が見えてくるのかどうかが大きいのだと思う。

合理的でもないし、残念なことがあるかもしれない。それでも、チャレンジしてみる。たのしみを見いだす。そういうことにわくわくする。

バウムではタグラインをCompose the momentsとしました。和訳は、場生む。
場はヒトとヒトの紡ぐmoments (場面)の集合で出来ているし、そのために作られる。
2025年にどんなmomentsを作っていけるのか。とてもたのしみです。

株式会社バウム 代表取締役 宇田川裕喜

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BAUM LTD. は、以下の期間を年末年始のお休みとさせていただきます。

【年末年始休業期間】
2024年12月28日(土)〜2025年1月5日(日)

この間にいただいたお問い合わせは、2025年1月6日(月)以降、
順次ご返信させていただきます。何卒ご理解いただければ幸いです。

来年も引き続きよろしくお願いいたします。
どうぞ楽しい年末年始をお過ごしください。