雪かきと王様

スカンジナビアの冬は雪深いイメージだと思う。
しんしんと降る雪に暖かい暖炉、コーヒー、ゆっくりした時間。
そんなイメージが強いはず。

じつはデンマークはあまり雪が降らない。
去年は1度、今年の冬は今のところ2度だ。

積もってもこのくらい。5〜10cmというところ。
気温は低いのでサラサラのまま数日保たれることもある。

朝7時、雪道を運転していると、こんな光景が目に入った。
かわいらしい除雪車が街の中心部で雪かきに励んでいた。

ん?
よく見ると、なんとも普段着の恰幅のよいおじさんが運転している。

さて問題です。なぜおじさんは普段着で雪かきをしていたのか。

A)おじさんは雪かきが趣味だ
B)おじさんは普段着勤務
C)おじさんは雪をかくとお金がもらえる

正解は、「C」。
雪をかくと助成金がもらえるそう。
仕組みなどはみんなあまり把握してないようだけど
そもそも雪があまり降らないから、除雪車を所有してるだけでも
リスクが高いから参入する人は少ないそう。

小国デンマークでは行政が現場レベルの仕事をどんどん民間業者や個人に
アウトソーシングしている。公共施設の管理関係はもちろん、公営の病院の運営スタッフまで
民間のバッヂが目立つ。

デンマーク人は50%以上の高い所得関連税を払いつつも、すべてが行政サービスに
賄われるべきとは考えていない。550万人の小国ならではの意識かもしれないし、
「全員が国の運営者」という社会民主主義ならではの自覚が長年かけて根付いているからかもしれない。
その精神を説明するために引き合いに出される、こんな例え話がある。
1000年以上昔のバイキング時代、各国に侵攻し連勝を続けていたバイキングは
フランスに到達した。フランス側は「王と話をしたい」と問いかけたところ、デンマーク側はこんなふうに返したという。「俺たちは全員が王だ」

その後、敗戦を重ねて農業・畜産・商業の国へ変貌する課程で小作人が国民の大半だったこともあるもののその気持ちは今でも大切にされているそう。ちなみに王制はしっかりしており、御年76歳、ヘビースモーカーの女王は人気者で、大晦日のスピーチは国民のたのしみごとだ。

上の写真、よくよく見てみると雪をものともせずに通勤する自転車の人たちとキックボードで駆け抜ける少年が写ってる。

すべって転んでる人も何人も見たけれど、雪の日はなんだかみんな浮足立って、たのしそうだ。
もしかしたら個人で除雪車を所有するのは助成金目当てというより、趣味性が強いのかもしれない。
みんなが好きなことの王様としてたのしみながら街のことができる未来、想像してみるとわくわくする。
「除雪の王様」「剪定の王様」「排水口の王様」・・・・
みなさんは何の王様になりたいですか。